第109回日本美容外科学会に参加してまいりました。理事長の大場教弘医師が鼻尖形
成術のシンポジウムで、副院長の新行内芳明医師が鼻中隔延長術のシンポジウムで、
それぞれ発表をさせて頂きました。
演題名 : 耳介軟骨を使用した鼻中隔延長術
新行内芳明、大岩宏維、豊田梢、大場天祐子、大場教弘
プリモ麻布十番クリニック
【背景】
鼻中隔延長術における移植材料として、肋軟骨や鼻中隔軟骨、保存軟骨等が使用されるが、当施設では耳介軟骨を第一選択としている。今回、当施設で耳介軟骨移植による鼻中隔延長術を行った症例に関し、手術方法や長期成績を検証し、報告する。
【対象および方法】
2009年3月から2020年10月まで、当施設で鼻中隔延長術を行った1151例(男性82例、女性1069例)を対象とした。対象患者の平均年齢は27.1歳(16~64歳)。両側の耳甲介から採取した2枚の耳介軟骨で、鼻中隔軟骨を挟むように固定して使用した。また、延長材料に用いた耳介軟骨の残りを鼻背部、鼻尖部および鼻柱部に移植することで鼻の輪郭を形成した。
【結果】
延長材料として使用した移植軟骨は、耳介軟骨1053例、肋軟骨86例、鼻中隔軟骨12例、保存軟骨0例であった。耳介軟骨を使用した1053例において、術後に当施設で修正を行った症例は116例であり、その原因は形態の不満足が83例、鼻先の偏位が26例、鼻腔内への移植軟骨の突出が5例、感染が2例であった。採取した耳介軟骨は平均24.7mmであった。耳介軟骨採取部の術後合併症として、耳介変形の修正術を要した症例は1例であった。
【考察】
耳介軟骨は他の移植材料に比べ柔らかく、術後の鼻にも柔軟性が得られるため自然な仕上がりになると考えている。また、耳介後部の軟骨採取部の瘢痕が目立たないこと、移植軟骨の柔軟性により術中及び術後の彎曲の矯正がしやすいことなどが長所として挙げられる。一方で強度が足りないために無理な延長には耐えられずに彎曲する可能性がある。もともと耳甲介が小さい、湾曲が強い、強度が不十分である症例や、すでに耳甲介軟骨が採取されている症例では使用を控えている。また、術後の瘢痕拘縮により鼻が非常に硬く、強固な移植材料が必要な症例には適さない場合がある。耳介軟骨採取部の術後合併症としては、感覚障害や耳介血腫、耳介変形などが考えられる。
演題名 : 当院における鼻尖のprojectionを得る手術 ~鼻中隔延長術を用いないケースについて~
所属 : プリモ麻布十番クリニック
大場 教弘、大岩 宏維、新行内 芳明、下山 梢、大場 天祐子
抄録 :
当院では基本的に鼻先のprojectionを得たい場合、鼻中隔延長術を適応とすることがほとんどである。鼻中隔延長術を用いずに鼻先のprojectionを得る手術について調べてみたところ、鼻尖縮小術3D法(鼻尖縮小術+鼻翼軟骨移植術)の一部の症例、および鼻翼挙上術を行うことで鼻尖部に若干のprojectionを得ることがわかった。それぞれの術式について詳細を報告する。
2009年1月から2020年12月までの12年間に演者が行った鼻尖縮小術3D法は198例であった(男性21例、女性177例、平均年齢25.7歳、平均経過観察期間11.7か月)。また鼻尖挙上術は14例経験した(男性2例、女性12例、平均年齢28.0歳、平均経過観察期間6.2か月)。
鼻尖縮小術3D法における適切なprojectionが得られた症例は、鼻尖部が大きいと判断される症例で、鼻翼軟骨のフレームワークがしっかりとしていて、かつ皮膚軟部組織が比較的薄く柔らかい症例であった。鼻翼挙上術によって鼻先は挙上し、若干のprojectionを得ることができた。この手術によって長い鼻の印象が短くなるが、それに伴って鼻の穴は正面から見えやすくなる。
当院では鼻先を高くする場合には鼻中隔延長術が第一選択となる。今回示した術式は基本的に別の主訴のための術式となるが、症例によっては若干のprojectionが得られ、そのことは鼻尖形態を患者の希望に近くすることに寄与していると考えられた。