Dr.大岩連載 バストコラム vol.4
美意識の高い女性が増えている今、昔と比べると豊胸術を受けたことがある女性も珍しくなくなってきています。同時に増加しているのが、他院で豊胸術を受け、結果に満足できず修正を希望するケースです。
プロテーゼによる豊胸術の修正で多いケースとは?
プロテーゼによる豊胸術の修正にはいろいろなケースが考えられますが、長い経過の中で、被膜拘縮を起こしてバストが変形し硬くなってしまったというケースがあります。
被膜拘縮は体の防御反応によって起こる被膜がプロテーゼを締め付けることで起こります。原因はさまざまですが、体に対して大きすぎるプロテーゼを入れることもひとつの要因です。
大きすぎるプロテーゼはバストが硬くなりやすいだけではなく、見た目が不自然なバストになってしまう場合もあります。やせ形の人で豊胸術を受ける方は、周りからばれない程度にほどよくバストアップしたいと考えている方が多いようです。この場合、サイズは2カップ程度、プロテーゼの大きさなら200ccくらいが適切です。
ヒアルロン酸豊胸で満足できず、プロテーゼにいきつくケース
続いて多い相談がヒアルロン酸豊胸や脂肪注入豊胸などの「注入系の豊胸術に満足できなかった」ケースです。最近は特に体への負担が少ないと言われているヒアルロン酸豊胸の修正を希望する人が増えているようです。では、それぞれどんな理由で修正を希望する人がいるのでしょうか。
・ヒアルロン酸豊胸で硬くなった胸をなんとかしたい
ヒアルロン酸豊胸の修正では「バストが硬くなってしまった」「ヒアルロン酸が吸収されたあとも、一部しこりが残ってしまった」というケースが多くなっています。
ヒアルロン酸は徐々に吸収されてなくなっていくのですが、ヒアルロン酸の周りに被膜ができ、そのまましこりとして残ってしまうことがあります。このしこりが乳がん検査の判定を難しくすることもあるのです。ヒアルロン酸によるしこりは、外科的に穿刺したり、ヒアルロニダーゼと呼ばれる酵素で溶かすことができます。
・脂肪注入豊胸手術の修正例
脂肪注入豊胸の修正でも、しこりができてしまっているケースが多くなっています。脂肪注入の場合、注入する脂肪に不純物が混じっていると石灰化や脂肪壊死が起こりやすく、しこりの原因となります。また脂肪を吸引した太ももなどが凸凹になってしまったというケースもあります。
その他、脂肪注入豊胸でも「思っていたよりサイズアップしなかった」「すぐに吸収されてしまって元の大きさに戻ってしまった」という声もあります。
・ヒアルロン酸豊胸や脂肪注入豊胸は費用も高い!
豊胸に使用するヒアルロン酸は定着率を高めるため、分子の大きいものを使用しています。さらに硬めのヒアルロン酸を使用することでバストアップがしやすい面もありますが、こうしたヒアルロン酸は、より凸凹になりやすいと言えます。また質のいいヒアルロン酸は比較的高価で、2カップ程度バストアップさせたいという場合、費用がシリコンプロテーゼよりも高額になることもしばしばです。
脂肪注入豊胸も一般的に100万円以上かかることが多く高額です。また充分な脂肪が取れる人でないと難しい手術になります。さらに脂肪吸引と注入の2種類の手術を行うことになるので、体への負担もそれだけ増えることに。注入した脂肪がすべて定着するわけではないので、ヒアルロン酸注入と同様、2カップ以上のサイズアップは一般的には難しいのが現実です。
このように注入系の豊胸術は効果が持続しない場合がある、費用が比較的高い、しこりになることがあるなどデメリットも考えたうえで選択しなければなりません。1回の施術で確実にサイズアップしたいという方にはシリコンプロテーゼの豊胸術が最適と言えるでしょう。
プロテーゼの入れ替え・若い頃に入れたプロテーゼの形が変形するケースも
豊胸術は昔から行われていた美容整形術のひとつです。それだけに現在50代あるいは60代以降の女性でも若い頃に豊胸術を受けたという経験を持っている方もいます。
現在ではシリコンプロテーゼが主流となっていますが、当初は生理食塩水のプロテーゼが使用されていました。経年劣化した生理食塩水のプロテーゼはつぶれたり、中身が漏れだしたりしてバストまで変形してしまう可能性があります。古いシリコンプロテーゼでも同様です。このようなケースではプロテーゼを抜去する必要があるでしょう。
またかつて使用されていた、ハイドロジェルのプロテーゼの中には破損した際に成分がしみ出して、人体に影響する可能性が懸念されているものも。過去にハイドロジェルのプロテーゼを入れたと分かっている方はクリニックで相談してみることをお勧めします。
最新のプロテーゼはシリコンの質だけではなく、形や手触りの良さも進化しています。かつて使用されていたラウンド型はデコルテ部分もボリュームアップできる反面、痩せ形の方には見た目が不自然という欠点がありました。最近のプロテーゼは痩せている方に使用しても自然なアナトミカル型や寝ているときはラウンド型に、立っているときはアナトミカル型に変化するタイプなどもあり、より自然なバストに近い見た目と感触に近づいています。
check
✓ 豊胸術を繰り返している
✓ ヒアルロン酸注入や脂肪注入など注入する豊胸術で満足できなかった
✓ 過去に豊胸術を受けたが、バストが変形している
まとめ
当院では他院で受けた豊胸術の修正依頼を受けることも多くなっています。プロテーゼによる豊胸術の修正で多いのはやはり被膜拘縮に関することですね。
被膜拘縮の修正はワキやアンダーバストのラインからアプローチして、被膜を切開したり、プロテーゼを入れる層を入れ替えたりして対処します。なかにはバストがカチカチになって被膜を切開するのに時間がかかるケースもあります。
被膜拘縮の原因はさまざまですが、大きすぎるプロテーゼを入れることも原因のひとつです。当院では体にあったサイズをおすすめしていますし、プロテーゼを入れる際に術野を再消毒する、全員手袋を履き替える、雑菌の混入を防ぐため、プロテーゼが皮膚に触れないように専用器具を用いてポケットに挿入する、挿入時には抗菌剤を混ぜたゼリーで滑りをよくする……といった配慮をすることで被膜拘縮のリスクを多角的に減らす努力をしています。
その他に増えているのが、ヒアルロン酸豊胸の修正です。しこりができたり、バストが硬くなったりして悩んでいるという方が多いですね。ヒアルロン酸によるしこりは穿刺吸引やヒアルロニダーゼという酵素で分解することもできますのでご相談ください。
ヒアルロン酸豊胸を経験してからシリコンプロテーゼを入れる方もいらっしゃいますが、費用や見た目の美しさなどから「はじめからプロテーゼにすればよかった」とおっしゃる方も多いですね。
脂肪注入によるしこりの場合、まずは穿刺して吸引除去を試みますが、内容が液状ではない場合や被膜が石灰化していると切開して除去するしかない場合もあります。MRIなどで検査してから判断しますので、まずはご相談ください。
過去に入れたプロテーゼが変形していて心配という相談を受けることもあります。フランスでは2012年にPIP社というメーカーのハイドロジェルプロテーゼに使用されていた工業用シリコンで健康被害がでる可能性があるとして回収が命じられるという騒ぎがありました。
もちろん当院ではこのPIP社のプロテーゼは一切取り扱っていませんし、PIP社のプロテーゼを抜去したい場合の抜去費用は特別に半額にさせていただいております。
現在、日本で流通しているのはほとんどが、コヒーシヴシリコンです。通常の生活で破損することはほとんどなく、グミのような硬さがあるため、破損した場合でも体内に流れ出てしまうということがありません。
古いプロテーゼを抜去したあとはやはりバストのボリュームが減ってしまいます。プロテーゼと同じようなボリュームを脂肪注入で出すのは難しいため、当院では新しいプロテーゼを入れ直す方が多いですが、ヒアルロン酸を抜去したスペースに入れて形、柔らかさを維持する方法もございます。もちろん抜去のみのご相談もお受けしています。
豊胸術を受けた方のなかには周囲に知られたくないという方も多く、バストの形が不自然であったり、変形していたりしても、誰にも相談できなかったとおっしゃる方もいます。また数十年前に手術を受けたので、クリニックがなくなっていてどこにも相談できずに悩んでいたという方もいらっしゃいました。不安なことがあれば、まずは一度ご相談ください。最適な方法を一緒に考えさせていただきます。
このページに出てきた用語集
被膜拘縮
シリコンプロテーゼを入れると体は防御反応としてその周りに被膜を生成する。被膜は豊胸術後100%形成され、それ自体が薄い場合、見た目や手触りなどに不具合はない。まれにこの被膜が厚くできて、中に入っているシリコンプロテーゼを締め付けバストが硬くなってしまったり、ボールのような不自然な見た目になったりすることがある。これを被膜拘縮と呼ぶ。重症の被膜拘縮は約4%の確率で起こると言われている。
ヒアルロニダーゼ
ヒアルロン酸を分解する酵素。しこりや凸凹が気になるときや、ヒアルロン酸の注入量が多すぎた場合などの修正に使用することがある。
アナトミカル型
下の方にボリュームが集まる涙の滴型のプロテーゼ。自然なバストの形に近い。痩せ型の人のほか、男性の豊胸術にも適している。