がんと生活習慣
増え続ける日本人のがん患者
厚生労働省の発表によれば、2009年に亡くなった方約114万人のうち、悪性新生物すなわちがんでなくなった人は約34万人で、1981年に脳血管疾患を抜いて1位になってからずっと増加し続けています。また、2005年のがんの罹患のおよび死亡データから、日本人の二人にひとりががんに罹ると推定されています。このようにがんの罹患率が上昇しているのは先進国の中では日本だけであり、実際に米国では1990年を境にがんの罹患率および死亡率が低下し始めています。
このように日本では2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっているという、まさにがん大国です。
なぜ日本のがん患者は増え続け、米国のがん患者は減っているのか
ではなぜ、米国ではがんの罹患率や死亡率が減少し、日本では増えているのでしょうか。いくつかの要因はありますが、米国では1970年代からがんや心筋梗塞の原因とライフスタイルとの関連性に関する調査が進められて、1977年に「アメリカ合衆国上院栄養問題特別調査委員会報告書(通称マクガバン報告)」としてまとめられました。その報告から、「心臓病やがんなどの慢性疾患は偏った食生活がもたらした食源病である」ことを示し、それまでの中心であった高カロリー、高脂肪の肉食から穀物や野菜、果物を中心としたミネラル豊富なオーガニックフード中心の食事に変えるよう、強く警告しました。また1990年には米国国立癌研究所を中心に、がんの予防に効果の高い食物「デザイナーフーズ」が発表されるなど、医療における栄養学の重要性が強く認識されるようになりました。さらに、各種検査機器の発達により、より早期にがんが発見できるようになることで治療率も著しく向上しました。
一方、日本はどうでしょうか。日本では、古来の野菜や魚を中心とした日本食から、肉類を中心とした食の欧米化が進んできています。実は先のマクガバン報告では「がんをもっとも予防する効果が高いのは日本の元禄時代の食事である」との記載があり、日本食に対する評価は非常に高いのです。また、日本ではがん検診の受診率の低さが先進国の中で際立っております。大腸がんや乳がん、子宮がんの検診受診率は米国の2分の1以下となっており、日本人の寿命が延びていることと相まって「がんを生みやすい」状態になっているといっても過言ではありません。